最近の僕は音楽にすがっている。
フジファブリックの初期のアルバム「アラモルト」を聴いていた。ずっとずっと、繰り返し聴いていた。
下北沢のコワーキングスペースに向かう途中。電車の中で聴いた。
深夜、近所を散歩しながら。すこし音を大きくして聴いた。
ときには、別れたあの子のことを思ったりしてさ。すこし情けなくて、噛み締めて、聴いた。
ときには、センチメンタルになり。ときには、気分が高揚したり。ギターを弾いたり。歌ってみたり。
気分を変えて毛皮のマリーズなんかも聴いたりしたんだけど、でも、やっぱり、今の気分はフジファブリックだった。
今、曲を作っている。
空っぽの夜。
僕はとある街を散歩中だった。
アイデンティティだとか、自分の向かうべきところについて、アホなりにバカなりに頭をひねって、ぼんやりと夜風に当たりながら、考えていた。
銭湯帰りの僕はぼうっとした頭で、ポスカで塗りたくったようなガラクタな夜空を眺めて、小さくひかる星の数を数えていた。
ビルに見え隠れする、低い月。
まん丸のはずなのに笑ってみえた。
電車の音。
遠くでがたんごとん反響していた。
僕は気分を変えて、夜空を飛んでみたりして。眼下に広がる街並み。さっきまで、頭をやわいでいた銭湯や、赤提灯、道ゆく人。
ふわふわと僕の体は少しずつかるくなって、ゆっくりと夜空に浮かぶ。
この街で僕だけが、夜空に浮かんでいた。
楽しかった。ただただ眺めているのが楽しくて、それに夢中だった。
だけど、どこを探しても、キラキラした街並みの中に、僕はいない。
僕だけを置いて、夜は更けていくのだった。
その事実に気がついて、また、我にかえり、急いで自分のことを考える。
センチメンタルなんだけど、不思議とそこまで寂しくはないんだ。そんなことを言い聞かせながら。
今の自分。これからの自分。
楽しいはずなのに。
僕はイヤホンを耳に当てる。フジファブリックを聴く。
ゆっくりと地面に足を下ろし、何もなかったようにすたすた歩く。
最後の曲を聴き終わった。すこしだけ心が満たされた気がした。
あの日の夜は、今日も更けている。
やはり、僕だけを置いて。
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okutaniのTwitter以上, ブログ未満な文章
センチメンタルとフジファブリック
2020.08.03