日々にかじりついて、かき集めたポケットの小銭ギリギリで住んでいる吉祥寺のデザイナーズマンション。
安い部屋に引っ越すことが億劫で、漠然と将来のためと積み立てていた金をすべて崩し、生活費に充てた。
キャッシングして酒を飲むことも最近は増えてきた。
二十代から何一つ、変わっちゃいない。
親からもらった金をギャンブルで溶かし、当時付き合ってた元カノに飯を食わせてもらっていた。
あれから10年ぐらい経つが、自分自身、変わる気配が一向にない。
この間、玄関先を小さいヤモリがうろちょろしていた。
やけに頻繁にそいつを見るんで、遠目から観察していたら、どうやら、やつは俺んちのインターホンを住居にしているらしい。
この間は、インターホン下の2つ空いた隙間の左方から、ひょっこりと顔を覗かせていた。
じっとこちらを見て、一切動かなかった。
「死んでんのか?」と思い、すっと人差し指を彼の顔の前に持っていくと、素早く顔を引っ込めた。
その仕草に、金もない俺の心はすこし癒された。
季節もきせつ。彼は体も小さい。
俺は可哀想に思い、よっぽど家の中にでも入れてやろうと思ったが、エサやらなんやら、飼うのは小難しそうだったので、考えるのを辞めた。
元カノが結婚したらしい。
会ったことはないが、相手の男は絶対良い奴だろう。
俺は、1mmも優しくなんかなかった。
俺がずっと思っていた優しさは、本当の意味では人を傷つけていた。
それが証明されたことに、すこし安心して、そしてすぐ我にかえった。
中央線はいつもどおり、ガタゴト揺れている。
吹きさらしに傘。
おばあちゃんがリップを直すのを見た。
酒が増える。
電線にカラスが15羽。
一人でボケて一人でツッコむ。
そんな生活も上手にできるようになってきた。
愛憎のその先。
終わらない宿題。
点と線。
花束。
末長く。
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プロポーズ
2023.12.21