日々をぐっと、濃縮して、溶かす。
壊して、バラして、みつめて、みつけて、磨く。
路地裏で流した涙が、僕らを銀河の果てへ連れてゆく。
「美しいものってさ、なんであんなにも美しいんだろう?」
夜が終わり、恋が生まれる。
コンビニのホットスナックの匂いにやられて、飲んだ酒をぜんぶ吐いちまった。
いつもと違う中央線、揺れているのは、いつもと違うのは、僕の心が「がたんごとん」と揺れ続けているのは。
二人の影。
「一緒に初恋を越えようね」酒を飲みながら約束した、あのアバズレ女。
欠落した感情の欠片を探し歩く。
「三十歳になったらさ、俺たちなにしてるんだろうね」
夏の夕暮れ、井の頭公園に浮かんだ、僕とあいつの残像と、缶ビール。
僕ら恋と革命のために生まれてきた。
「帰り道のお月さまがね、とても綺麗で。それでさ、その月がね、笑った君の口の形に似てるんだ」
君の笑った顔を思い出す。
洗濯物が風でゆらゆらと揺れている。
「このまま一生、一緒に居ようね」
安アパートの階段を、なるべく音が響かないように、ゆっくりとのぼる。
思わず吹き出してゲラゲラ笑っちゃうぐらい、あっという間に日々は過ぎてゆく。
あの日の歌が聴こえてきて、朝、目が覚めた。
僕を見つめる君を見ていた。
...
「ねえ、あと30分ぐらいで着くかな」と、つまらなさそうに助手席で君はスマホをいじり、僕は「うん。そうだね」とすこし笑って君に顔を向けるも、君は頷きもせず、黙ってスマホをいじり続けている。
スマホを横に向け、YouTubeかなにかで韓国アイドルの動画を見始めて、僕は前に意識を集中した。
沈黙が苦手だった。
頭の中で必死に、なにか話題になる事柄をたぐり寄せ、それと同時に、アクセルとブレーキを丁寧に扱い、たいせつな彼女に不快な思いをさせないよう、一層気を張り詰め、快適なドライブを提供することを心がけた。
テールランプが淡く揺れる。
トンネルの灯りがキラキラと、僕らの左右を流れ星のように通り過ぎてゆく。
君はまだスマホを見続けている。
なんだか居心地が悪くなった僕は、たまらなくなって、窓を開けると、ごうごうと風を切る音が車内に響いた。
ゆっくりと、心に爪を立てていた。
こんなにも君を愛しているのに。
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okutaniのTwitter以上, ブログ未満な文章
こんなにも君を愛しているのに。
2024.08.10