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okutaniのTwitter以上, ブログ未満な文章

吉祥寺のHUB、太宰

2019.09.27

① 吉祥寺のHUBで一人で飲んでいる。

たまに、ふらと、一人で飲みたくなる。本当は、誰かと、飲みたいのだけれども、その気持ちをかかえつつ、吉祥寺のHUBで、一人で飲んでいる。

そこで一人で飲んでいると、なぜか僕は太宰治のことを考える。

太宰も、とりとめのない、どうしようもないことを、お酒を飲みながら考えていたのだろうか、と。

女のこと。やるべきこと。生きること。死ぬこと。

あの子のことを考えた。

あの子は太宰を読むだろうか。

あの子は銀杏BOYZを聴くだろうか。

吉祥寺のHUBでこそこそナンパする男。それに乗っかる女。

その光景を、ザワザワと、せわしない店内、じっと見ていると、やるせないのと同時に、どうしようもなく、僕は太宰のことを考える。
太宰は、ロックだ。

② 実は今、この文章は、HUBの店員(歳は30ごろ、なかなかの美人)に頼み込んで、おそらくオーダーを取るであろう紙とペンを拝借し、こうやって書いている。

なんだか心地が良い。

赤と青のジェットストリームのペン。変哲も無い手のひらに収まるメモ用紙4枚。

ジントニック、ライムサワー、タランチュラ。ゆっくりと体にまわる。

こんなバカなことを、ザワつく店内、一人、やっている。

でも、それでいいんだとも、バカみたいに思っている。

③ 実のところ、最近はまわりの人たちがよく分からない。

自分自身、自分のことをよく分かっていないのだから、そりゃあ、当然のことなのだけれども。

それでも、最近はまわりの人たちがよく分からない。

だから、「自分が変わらないといけない」。

いつまでも、太宰のことを思っていてはいけない。

いつまでも、銀杏BOYZを聴いていてはいけない。

でも、世間一般のいう、『大人』にはなりたくない。

今まで自分の人生で出会った女の子のことを、考え、やっぱり、現金主義ながら、最近会った、かわいい子を順に、頭に浮かべる。

自分に近く、近い過去で、「かわいい」と10人中7人以上は言うであろう子を、とりとめもなく考えている。

そして、やっぱり、最後には太宰のことを考えるんだ。

④ この文章はデジタル化される。

スマホの電源が切れたのだ。

だから、店員さんに無理言って、紙とペンを借りた。

実のところ、その前。隣の席の、かわいくもない女に「スマホの充電器はないか」と、よそよそしく、問いかけた。

「無い」と、その女は言った。

僕は、『ブスのくせに、かわいくもないくせに、その上、スマホの充電器も持っていないのか、この女は』

と、理不尽ながら、そんなことはもちろん言えもせず。頭で考えていた。

店内に流れる、ラップだかソウルだか分からない音楽が、うるさく響く。

僕はまだ、あの子のことを考えていた。

『私ね、クラブが好きなの。お兄さんが、ダンスを教えてくれるんだ。お酒もおごってくれるのよ。朝まで、踊っているの。私ね、音楽が好きだから』

僕は銀杏を、敏感少年隊の「サウンドオブ下北沢」を、たくさん、聴いた。

太宰なら、こんなとき、どうしただろう。