① 吉祥寺のHUBで一人で飲んでいる。
たまに、ふらと、一人で飲みたくなる。本当は、誰かと、飲みたいのだけれども、その気持ちをかかえつつ、吉祥寺のHUBで、一人で飲んでいる。
そこで一人で飲んでいると、なぜか僕は太宰治のことを考える。
太宰も、とりとめのない、どうしようもないことを、お酒を飲みながら考えていたのだろうか、と。
女のこと。やるべきこと。生きること。死ぬこと。
あの子のことを考えた。
あの子は太宰を読むだろうか。
あの子は銀杏BOYZを聴くだろうか。
吉祥寺のHUBでこそこそナンパする男。それに乗っかる女。
その光景を、ザワザワと、せわしない店内、じっと見ていると、やるせないのと同時に、どうしようもなく、僕は太宰のことを考える。
太宰は、ロックだ。
② 実は今、この文章は、HUBの店員(歳は30ごろ、なかなかの美人)に頼み込んで、おそらくオーダーを取るであろう紙とペンを拝借し、こうやって書いている。
なんだか心地が良い。
赤と青のジェットストリームのペン。変哲も無い手のひらに収まるメモ用紙4枚。
ジントニック、ライムサワー、タランチュラ。ゆっくりと体にまわる。
こんなバカなことを、ザワつく店内、一人、やっている。
でも、それでいいんだとも、バカみたいに思っている。
③ 実のところ、最近はまわりの人たちがよく分からない。
自分自身、自分のことをよく分かっていないのだから、そりゃあ、当然のことなのだけれども。
それでも、最近はまわりの人たちがよく分からない。
だから、「自分が変わらないといけない」。
いつまでも、太宰のことを思っていてはいけない。
いつまでも、銀杏BOYZを聴いていてはいけない。
でも、世間一般のいう、『大人』にはなりたくない。
今まで自分の人生で出会った女の子のことを、考え、やっぱり、現金主義ながら、最近会った、かわいい子を順に、頭に浮かべる。
自分に近く、近い過去で、「かわいい」と10人中7人以上は言うであろう子を、とりとめもなく考えている。
そして、やっぱり、最後には太宰のことを考えるんだ。
④ この文章はデジタル化される。
スマホの電源が切れたのだ。
だから、店員さんに無理言って、紙とペンを借りた。
実のところ、その前。隣の席の、かわいくもない女に「スマホの充電器はないか」と、よそよそしく、問いかけた。
「無い」と、その女は言った。
僕は、『ブスのくせに、かわいくもないくせに、その上、スマホの充電器も持っていないのか、この女は』
と、理不尽ながら、そんなことはもちろん言えもせず。頭で考えていた。
店内に流れる、ラップだかソウルだか分からない音楽が、うるさく響く。
僕はまだ、あの子のことを考えていた。
『私ね、クラブが好きなの。お兄さんが、ダンスを教えてくれるんだ。お酒もおごってくれるのよ。朝まで、踊っているの。私ね、音楽が好きだから』
僕は銀杏を、敏感少年隊の「サウンドオブ下北沢」を、たくさん、聴いた。
太宰なら、こんなとき、どうしただろう。
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吉祥寺のHUB、太宰
2019.09.27